事業承継と株式の相続
株主がなくなると当然、株式も相続されます。
株式の相続によって一般承継した場合、株式取得者は、会社に対して株主名簿の名義書換を請求することができます。会社は、名義書換の請求が法律上の要件を満たしている限り、拒否することはできません。
しかし、会社の経営にいろいろと口出しをしてくる人物に株式が相続された場合、とくに、小規模な同族会社にとっては好ましくない状態といえるでしょう。このような場合は、相続開始後、相続人に対して他の株主に譲渡をしてもらうように交渉をしたり、会社自身が、その株式を取得するといったことを行う必要がでてきます。もちろん、それらは、当該相続人の合意が前提となります。
相続人等に対する株式売渡請求
そこで、相続人に株式の売渡義務を負わせる方法もあります。
「相続人等に対する株式売渡請求」の制度といって、会社が、相続その他の一般承継によって株式を取得した者に対し、株式を強制的に買い取ることができます。
相続人等に対する株式の売渡請求の手続きのポイントは、下記の通りです。
①定款にその旨を定めること
②対象は、譲渡制限株式に限る
③行使期間は、相続等があったことを知った日から1年以内
④実際に、相続人等に対して、売渡請求をする場合、そのつど株主総会の特別決議が必要
⑤買い取り価格は、分配可能額の範囲内であること
リスク
この制度の本来の趣旨は、会社の運営を阻害するような株主が相続人となったときに、会社の主導で買取できるというものです。
しかし、これが裏目となる場合もあります。
例えば、創業者A氏が、70%の株式を持ち共同経営者B氏が、30%の株式を持っていた会社があったとします。A氏が亡くなり、A氏の相続人である息子が会社を継ごうと考えていたとしても、B氏がA氏の相続人に対して、株式の売渡請求を行使し、会社を乗っ取られてしまうということも考えられます。
このような思わぬ落とし穴もありますので、事業承継などお考えの場合も、一度弁護士に相談されることをお勧めします。
(富山を支える会社を弁護士の立場からサポート|浦田法律事務所)